※一応、ネタバレを含む感想です。
ドラマ「エルピス」を最終話まで見ました。
あらすじ
看板キャスターとして報道番組を背負う立場となった浅川と距離を置き、一人冤罪事件を追い続ける岸本。
真犯人を特定する証拠のスクープは発表直前に潰されてしまうが、元報道マンの村井から、過去にお蔵入りになった副総理の不祥事告発スクープを引き継ぐことに。
しかし、改めて告発者への取材を行った後に告発者が不審な死を遂げ、岸本は打ちのめされてしまう。
岸本と会い不祥事告発スクープを知った浅川は、自身の番組で報道する決意をするが……
感想
都合の悪いスクープを別のスクープで潰す件などリアルにあると思いますので、本当に理不尽だなと思いました。
岸本の怒りももっともだと。
パワハラセクハラ上司だった村井ですが、報道マンとしては尊敬できるという浅川。
悪い一面だけではなく他の面もあるという、多面的な人物像で印象に残ります。
ハラスメントは断じて良くないと思いますが、告発者の死に怒りを爆発させる部分は共感してしまいます。
報道番組のセットに乗り込んでの暴れっぷりに驚きながらも、理不尽に抗いたい気持ちは分かります。
副総理の過去の不祥事スクープ報道を決意した浅川と斎藤の駆け引きも、見応えがありました。
斎藤のロジックは成程とは思いますが、浅川の反論にやはり納得できます。
最善の対処をするためにも正確な情報、真実を知る必要がある。
報道の使命はそのためにあると。
岸本の存在で、信じることが希望になると考えた浅川ですが、斎藤のことは信じたのだろうか?などとも思いました。
交換条件の交渉に出たのは、信じる気持ちがあったからかなという気もします。
自分も斎藤のことを信じたいというか、本当に権力側にそういう信念のある政治家がいたらよいのにと。
交換条件により、冤罪事件の報道をすることができたのは良かったですが、過去の不祥事はまたお蔵入りに。
完全にスッキリはできませんが、当初の目的が果たされたのは本当に良かったと思います。
看板キャスターに返り咲いてからまた食事を摂るのが困難になっていたらしい浅川が、岸本と牛丼を食べる様子は、自分を取り戻したようで安心できます。
チェリーと死刑囚の松本が一緒に食事をする場面も、胸が熱くなりました。
犯人が捕まる場面などが描かれなかったのは、ドラマとしては事件の犯人探しよりも真実を報道するメディアの使命に焦点を当てていたからかなと。
報道により影響を受ける人々にも触れていて、報道の在り方を考えさせられます。
夢を見ようという浅川の言葉と共に、その後の描写がありましたが、干されるかと思っていた浅川がまだキャスターを続けていたのは驚きました。
というか、「夢を見よう」という言葉から、もしやこの描写は夢なのか?などと考えてしまいましたが。
真実を報道するキャスターが干されずにきちんと続けられる、真実がきちんと報道される、そういう正常な社会。
そういう夢、理想を思い描こうということなのかと。
逆に言うと、今の現実はそうではないということだと思いますが。
権力を監視する役割のメディアの重要性も伝わりましたし、人物描写も多面的で繊細で、とても見応えのあるドラマでした。
続編とかあればと期待します。