アニメ 伊藤潤二「マニアック」全話感想 動くとこうなる
Netflixにて配信中
伊藤潤二作品が好きで、原作漫画は読んでいるものです。
ストーリー等の感想というよりも、おおむねアニメ化についての感想を書いています。
1話
「怪奇ひきずり兄弟 降霊会」
長男・一也の第一声が思ったよりイケメンボイスで、ちょっとイメージと違うような…と思いましたが、その後はインテリ面したクズぶりに結構合っていたかなと感じます。
それぞれのキャラクターの声や演技もイメージに合っていました。
話としてはコメディだと思うので、もう少し動きやテンポで滑稽感があったらよかったかという気も。
みさ子が引っ掻くときの金属的な効果音は笑いました。
2話
「トンネル奇譚」
雪降る中での静かに淡々とした異様な雰囲気が良かったです。
「アイスクリームバス」
レトロなバスの音楽など、不穏感が増してきます。
今のご時世、子供を見ず知らずのアイスクリーム屋のバスに乗せないだろうなと、時代も感じてしまいました。
3話
「首吊り気球」
夜の寺で気球が現れる場面の動きが、不気味すぎて良かったです。
多分CGだと思いますが、実際に現れたらあんな風に飛んでくるのかも、夜の空にあんなのいたらかなり怖い、とリアルに想像できる動きでした。
友人の顔がしぼむ場面は、タイミング的に気球と同調してしぼむと思うので、原作のように振りむいたらもうしぼんでいるという方がいいのではと思いましたが、しぼんでゆく過程も映像的には面白いのでこれはこれでよいのかな…、という感じでした。
4話
「四重壁の部屋」
双一の話もギャグだと思うので、もう少し動きに滑稽感があればと感じました。
双一の声は滑稽感が安定していて良いです。
基本的にナレーションは無しにしているようですが、兄・公一の「図にするとこうなる」が普通にセリフで言われていて笑いました。
「睡魔の部屋」
原作で読んで個人的に好きな話です。
昭和感のある暗い雰囲気とか、異様すぎるラストとか良いと思います。
裏返りの部分を、もっとぐにゃぐにゃ動く映像で見れるかと思いましたが、そこまでは難しいかなという気もします。
5話
「侵入者」
ナレーションがないので、会ったその日に押切の家に行ったような流れに見えましたが、どうなのでしょうか。
原作だと交流を深めて友情関係ができてからのあれだったような気がしますが(うろ覚えです)、その方が怖いと言うか理不尽と言うか切ないと言うか、押切の不幸感が滲み出ると思います。
「屋根裏の長い髪」
髪の毛の動きが異様で気持ち悪すぎて良かったです。
本当にこんなことがあったらあんな動きなのだろうかと思わされます。
6話
「黴」
モノクロの作品で不気味さがありましたが、カビのはびこり具合をカラーで見てみたかったとも思います。
「蔵書幻影」
本の圧力が凄い。
7話
「墓標の町」
異様な村の風景などの雰囲気が良かったです。
なりそこないの描写も不気味でした。
8話
「恐怖の重層」
皮のめくれる感じなど、重層構造の異様さ凄惨さが伝わってきました。
母の狂気も恐ろしい。
「漂着物」
深海の不思議な感じがありつつ、わけの分からない気持ち悪さもあります。
腹から出てきた人の動きが不気味です。
9話
「富江・写真」
やはり富江が美しいですね。
ラストの姿も動きも声もかなり異様で怖くて良かったです。
富江の手下の会話は狂気の中にも滑稽感があり、なんとも言えないです。
10話
「耐えがたい迷路」
暗い地下通路の場面がやはり不気味です。
「いじめっ娘」
これは原作で読んでかなりインパクトがあった話です。
霊や化け物が出てくるわけではなくサイコスリラー的な話なのですが、サイコぶりに加えてビジュアル的にかなり怖かったと言うか、怖さと滑稽さの斜め上な混ざり具合にインパクトを受けました。
淡々とした日常の不穏な描写から、最後のインパクト、笑い方も怖さと滑稽さのバランスがあってイメージ通りでした。
11話
「路地裏」
古い雰囲気の風景や路地裏から聞こえてくる声の感じの不穏さが良かったです。
原作ではロープのくだりの因果応報ぶりについて分かるように描いてあったと思いますが、アニメでは分かりにくかったような。
「首のない彫刻」
暗い校舎での異様な雰囲気が良かったです。
彫刻達が動く様や音は不気味ですが、もう少し気持ち悪さがあればとも思います。
12話
「耳擦りする女」
まゆみのシュール感や美津のボソボソ感がイメージ通りで良かったです。
「双一の愛玩動物」
これもギャグだと思いますが、双一とコロンの交流がある意味微笑ましいです。
毛が漂い過ぎている場面も笑いました。
全体として
原作漫画の絵がとても綺麗で、美しい人物はとても美しく、異様な物はとても異様な存在感があり、絵の迫力が素晴らしいです。
なので、これをアニメでそのまま動かすのはやはり難しいだろうと思います。
人物のカットも、角度によってはちょっとバランスが…と思う時もありましたが、仕方ないのかなと。
首吊り気球や長い髪、富江の胴体など、異様なものが動くさまはやはりアニメならではで面白かったです。
動くとこうなるのか…気持ち悪いな…(誉め言葉)と。
声や全体の雰囲気などは、イメージに近くて良かったと思います。
ナレーションが一切なくなっているようで、原作ではナレーションでの説明があった部分が分かりにくくなっているような気もしますが、ナレーションがない方が訳の分からない異様さが出ているとも思います。
「うずまき」もアニメ化の予定があるものの、延期されてしまっているようで。
冒頭映像だと原作の絵に結構忠実な感じで期待しているので、こちらも早く見てみたいものです。
が、そもそも日本で見られるのかよく分かっていないのですが、配信サービスなどで見れることを期待しています。
ドラマ「ガンニバル」4~7話感想 不穏感と緊迫感に引き込まれる
ディズニープラスにて配信中
あらすじ
前任の駐在・狩野失踪に関する事件はひとまず解決となり、学校に馴染んできた娘のためにも、駐在として供花村で暮らし続けることを決めた阿川。
村の一員として和やかに過ごすものの、阿川家族を監視しているような村人の言動に次第に違和感を感じるように。
そんな折、村祭りの準備が進む中、狩野が失踪前に連絡をとっていたと思われる相手から阿川に電話がかかってくるが…
感想
4話~6話は、閉鎖的な村の同調圧力がじわじわとくる恐ろしさがありました。
後藤家のあからさまに威圧的な態度も嫌ですが、ニコニコしているのが急に豹変したりと、中村梅雀の不気味さも嫌過ぎます。
村の閉鎖的な不穏感に、次第に真相に迫る緊迫感で、ぐいぐい引き込まれます。
最終話の7話は、様々な人物の本心に触れたり、人食いを阻止するための攻防があったり、祭りのクライマックスに向かって色々な展開がありましたが、そこで終わりか!と。
時間を忘れて見入っていましたが、確かにあと1話のこの時間で終われる流れではなかったですね。
原作は未読なのであとどれくらいのストーリーがあるかは分かりませんが、この終わり方はシーズン2があるのだろうと思います。
犯罪者を追い詰めることを楽しんでいるかのような阿川ですが、家族を想う気持ちや被害者を助けたいという気持ちは本物という気もします。
暴力的な部分の迫力と事件解決に向かう真剣さと、柳楽優弥の演技がやはり素晴らしいです。
暴力の場面は格好良さなどはなく泥臭くリアルに痛々しく、村の同調圧力、家や親からの抑圧などの描写も印象的です。
シーズン2もあると思って期待しています。
大いに続きが気になるので、楽しみにしています。ドラマ「ガンニバル」1~3話感想 淡々と容赦ない描写
ディズニープラスにて配信中
あらすじ
失踪したという駐在警官の後任として、妻子と共に供花村にやって来た阿川。
村人からは歓迎されるも、村の有力者・後藤家からは威嚇的な態度をとられる。
後藤家の老婆の遺体が山で発見されるが、その遺体に不審な点を見つけたり、奇妙な風習を目にしたりなど、違和感を覚える出来事が続く。
そんな中、前任の駐在の娘から後藤家は人を食べているという話を聞き、阿川は真相を探ろうとするが…
感想
冒頭の長回しのショットから、鬼気迫る異様なインパクトで引き込まれました。
駐在所にやって来た主人公・阿川を歓迎する村人たちの和やかな雰囲気にも、どこか不穏さを感じてしまいます。
後藤家の敵意を感じる態度や奇妙な風習にも驚かされ、違和感を覚えざるをえません。
1話では、平凡で良識的な価値観の人間が閉鎖された村に入り、良識から外れた村の風習に翻弄される、というスリラーなのだろうと思わされます。
が、村人と和やかに接していた阿川にも妙な違和感が。
1話でも、村人に対する態度と後藤家に対する態度となんだか空気が違うなと、少し違和感がありましたが、後藤家の威嚇的な態度に対するものかなくらいに考えていました。
2話で後藤家と対峙する場面では違和感がが顕著になり、阿川もどこか良識から外れているのではと思わされてしまいます。
3話では阿川の過去が描かれましたが、犯罪者に対する攻撃性は異様に見えます。
大切なものを守るための行動という点では、後藤家の暴力的な行動と重なると指摘され、否定することはできません。
視聴者側と同じ価値観と言うか、良識的だろうと思っていた主人公が、こういう人物像というのはいい意味で裏切られました。
このため、村の外のこちら側が普通で、村が異様、後藤家の行動は異様な悪、などと単純に決めつけることができない、善悪のラインがあいまいということを考えされられます。
役者陣の演技も良く、やはり阿川役の柳楽優弥の演技が素晴らしいです。
徐々に違和感を滲ませる佇まい、家族に見せる父の顔、犯罪者に対する攻撃性と、多面的な人物像でも説得力のある演技だと思います。
やはり目力がありますし、どこか狂気をはらんだような眼差しで容赦ない暴力を振るう様子はインパクトがあります。
暴力的な部分は柳楽優弥主演の映画「ディストラクション・ベイビーズ」の容赦のなさを思い出させます。
今回は父親という顔もあり、家族に対する優しさと犯罪者に対する暴力性がフラットに現れるというのが複雑な印象です。
不穏さを醸し出す村の日常描写も、硬質で緊迫感のあるアクションやバイオレンス描写も良いです。
暴力の残酷さを淡々と容赦なく描いているのも印象的です。
何を考えているのか分からない、本心はどうなのか、そんな不安な空気や間を映像で表現できていると思います。
映画「さがす」の片山慎三監督が手掛けているということで興味を持ち観たものですが、期待通りの面白さでした。
原作は未読で、今後の展開がどうなるのか楽しみです。
アニメ「チェンソーマン」8話~12話感想 期待の方向性が間違っていました
※一応、ネタバレを含む感想です。
ちなみに原作漫画1部は未読です。
8話
前回のラストを姫野視点で繰り返すという演出には驚きました。
同じシーンを別視点で繰り返す演出自体は嫌いではありませんが、別視点だからと言って新たな発見があるわけでもなく、職場の先輩が酔っぱらった後輩を持ち帰ったということを強調する必要があるのかなと。
持ち帰るとかの描写は個人的には不快ですが(映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」を連想しますので)、少年漫画的には異性との接触イベントの一環という捉え方なのかもしれませんが。
姫野はそこまで重要なキャラクターなのか、という感じもします。
とは言え、逆にここまで細かく描写するのだから、主人公にとって重要なキャラクターなのだろうみたいな印象になっていたのが、このラストで退場してしまうとは。
え?もう退場?あれだけフューチャーしておいて?と驚きましたので、冒頭の繰り返し描写はこの展開の衝撃度を増すという効果はあったと思います(原作未読の場合ですが)。
9話
今回はマキマの不気味さやホラー感が多めで面白かったと思います。
マキマの攻撃手法は、個人的にも好きな漫画家・伊藤潤二の「潰談」が元ネタというのは、ネットの記事で読んだことがあったので、これかと。
このホラー感のある場面に音響の不穏さなども合っていたと思います。
コベニも、なんでこんな人を雇っているのかと疑問でしたが、ここまでの能力があるとは、意外性のあるアクションで良かったです。
しかし、ここまでの能力があるのに、拳銃を構えたまま車に乗り込む襲撃犯を撃たずにじっと見ている場面は、何故撃たない?と思いましたが。
乗り込んでから一応撃ったりして、もしかして、コベニは襲撃犯をわざと見逃したのか?何らかのかたちで襲撃犯とつながりがあるのか?と考えてしまいました。
後で、レビューなどで原作では弾切れのため襲撃犯を逃してしていた部分が改変されているということを知り、何故こんな不自然な改変を?と思うようになりましたが。
10話
アキや姫野の描写は丁寧だなと感じました。
主人公のデンジに比べて、共感を得やすい心情と言うかヒロイズムと言うか、分かりやすい動機と行動なので、製作側にとっても描きやすいし気持ちが入れやすいのかなと。
マンションでの岸辺とデンジの攻防は、パワーとの同時攻撃の割にはデンジのタイミングが遅いような気がしました。
あと、岸辺の蹴りの別アングル繰り返し演出は、個人的にはイマイチでした。
Youtubeなどでも一部映像を繰り返す演出がありますが、それ程面白いわけでもないのに、ここ面白いでしょうとしつこくアピールしているような印象があって、苦手なもので。
アクション映画での生身の凄いアクションシーンなど、そこで繰り返す演出がある時は、本当に凄いのでおお!と感じますが、アニメだと微妙に感じてしまいました。
11話
OPに出てくる悪魔とか魔人については、後々敵として出てくるのかなと思っていましたが、公安メンバーだったのかと。
12話
姫野とアキの思い出の回想がまたかと思いましたが、おそらく一般的には感動的なシーンなのだろうと感じます。
コベニが襲撃犯を捕えましたが、この状況でボーナスのために続けているというのは笑いました。
アキのセンチメンタルな空気の後のタイミングで、こういうブラックなテイストはやはり面白いと思います。
もしや、コベニが9話で襲撃犯を見逃したのは裏で繋がっているためかもなどと考えましたが、やはり関係なかったのでしょうか。
クライマックスの戦闘シーンは見応えがありました。
サムライソードは祖父の復讐という動機があるようですが、祖父のデンジからの搾取ぶりを知っていると、その主張はかなりムナクソが悪いですが。
とは言え、身内の復讐という点にはアキとの対比も感じます。
最後の最後は、やはり2期に続くみたいなカットでした。
色々と批判も多いようですが、同じ制作会社と監督で続けられるのでしょうか。
まとめ
おそらく普通にクオリティの高いアニメなのだろうとは思います。
普通に美男美女がカッコよくアクションしたり恋愛感情を抱いたり、人気があるのも分かると言うか。
個人的には、普通に美男美女がカッコよくアクションしたり恋愛感情を抱いたりする作品は、さほど興味は無いのですが。
漫画が人気になってきた辺りで、主人公の価値観が通常の少年漫画とは異なる、という記事を読んでいたので、固定観念を覆すような面白さがあるのかなという期待もあったものです。
これについては、勝手に期待しただけですし、期待の方向性が間違っていたのだろうと。
映画をモチーフにした部分もあるらしいし、チェンソーも「悪魔のいけにえ」だろうし、非情でブラックなホラーなテイストがあるのだろうか、という興味もありました。
また、漫画の1部は読んでいないものの2部は読んでおり、ブラックなテイストのユーモアやコマの間の取り方など面白いと思って読んでいましたので、そういう面白さがアニメにもあるのかなと。
アニメの印象としては、アキと姫野の存在感が強い、アキと姫野の回想シーンが多い、そのためか普通に感傷的なヒロイックなテイスト、かなと。
アクションシーンやホラーシーンなどは、結構楽しめました。
レビューなどを見ると、原作漫画とアニメは雰囲気が違う別物と書かれていたりしますので、時間があれば読んでみたいと思います。
ついでに
DVDの特典パッケージで、映画のポスターのパロディをしているのが話題になっていた件について。
個人的には、こういった表紙的なところで露骨なパロディはあまり良いとは感じませんし、デザイン的にもそんなに良いと思えませんでした。
その映画とキャラクターが重なる部分があるならまだしも、特にそういう意図も感じられなかったものです。
原作者が好きな映画をピックアップしているのか、使用許可の取れたものがこれだったのか、よく分かりませんが。
アキが「時計仕掛けのオレンジ」って、全く関係ないと思いますが。
アキのストイックな道徳観念は社会の洗脳によるものという皮肉でしょうか、もしかしたら今後道徳観念を放棄して非道の限りを尽くすような展開があるのでしょうか。
しかし、OPのような作中のワンシーンならともかく、その映画のメインビジュアルをタイトルロゴも含めて表面的にパロディしているようなものは、商業作品としてあまり良いとは思えないというところです。
アニメ「モブサイコ100 Ⅲ」最終話まで感想 良いラスト!
※一応、ネタバレを含む感想です。
アニメ「モブサイコ100 Ⅲ」最終話まで見ました。
7~8話
脳感電波部のエピソードは、青春だなあとホッコリしました。
温度差のすれ違いがありつつも、仲間と協力して何かするのはよいものだと、好感が持てます。
8話は少し作画が荒い部分があるような気がしましたが、最後の宇宙人の星の描写は圧巻です。
ギャグテイストの宇宙人とのギャップに笑いました。
9~12話
モブの暴走エピソードは、クライマックスに相応しく、メインキャラ達の成長やモブへの想いが強く伝わり、とても良かったです。
モブと花沢のバトルシーンは見応えがあり、花沢の行動やセリフにも胸が熱くなります。
本当に、なんていい奴、いいライバルなんだと。
最終話の霊幻がモブを追うシーンも、攻撃を避けつつ瓦礫を乗り越えてゆく、緊迫感のあるスピーディーな動きが素晴らしいです。
必死な想いも伝わり、このタイミングでの音楽も良い。
やはりこういう懸命に疾走するシーンはグッときます。
霊幻がモブに自分の正体を打ち明ける場面も、やはりグッときます。
年を取って思いますが、いい大人が隠していた自分の弱い部分を打ち明けるというのは、しかも子ども相手だと、かなりの勇気がいるよなと。
モブに対する真摯な態度は好感しかありません。
つぼみの人並み外れた肝の据わりようも素敵だなと。
モブといい感じで交流が続いているようですし、微笑ましい限りです。
最後の場面は、2期での霊幻のホワイティーのくだりが、かなり笑えてかなり刺さったので、それとの対比がとても良かったです。
ラストも、こういうモブの表情で終わるのは、本当に良い終わり方だと思います。
無表情からのギャップで、改めてその変化に感動します。
コミカルなテイストで人とのつながりや成長を真摯に描くストーリーも面白く、アニメーションのクオリティも高く映像的にも楽しめました。
好感の持てる素晴らしい作品だったと思います。
ドラマ「エルピス」最終話感想 まさか夢?
※一応、ネタバレを含む感想です。
ドラマ「エルピス」を最終話まで見ました。
あらすじ
看板キャスターとして報道番組を背負う立場となった浅川と距離を置き、一人冤罪事件を追い続ける岸本。
真犯人を特定する証拠のスクープは発表直前に潰されてしまうが、元報道マンの村井から、過去にお蔵入りになった副総理の不祥事告発スクープを引き継ぐことに。
しかし、改めて告発者への取材を行った後に告発者が不審な死を遂げ、岸本は打ちのめされてしまう。
岸本と会い不祥事告発スクープを知った浅川は、自身の番組で報道する決意をするが……
感想
都合の悪いスクープを別のスクープで潰す件などリアルにあると思いますので、本当に理不尽だなと思いました。
岸本の怒りももっともだと。
パワハラセクハラ上司だった村井ですが、報道マンとしては尊敬できるという浅川。
悪い一面だけではなく他の面もあるという、多面的な人物像で印象に残ります。
ハラスメントは断じて良くないと思いますが、告発者の死に怒りを爆発させる部分は共感してしまいます。
報道番組のセットに乗り込んでの暴れっぷりに驚きながらも、理不尽に抗いたい気持ちは分かります。
副総理の過去の不祥事スクープ報道を決意した浅川と斎藤の駆け引きも、見応えがありました。
斎藤のロジックは成程とは思いますが、浅川の反論にやはり納得できます。
最善の対処をするためにも正確な情報、真実を知る必要がある。
報道の使命はそのためにあると。
岸本の存在で、信じることが希望になると考えた浅川ですが、斎藤のことは信じたのだろうか?などとも思いました。
交換条件の交渉に出たのは、信じる気持ちがあったからかなという気もします。
自分も斎藤のことを信じたいというか、本当に権力側にそういう信念のある政治家がいたらよいのにと。
交換条件により、冤罪事件の報道をすることができたのは良かったですが、過去の不祥事はまたお蔵入りに。
完全にスッキリはできませんが、当初の目的が果たされたのは本当に良かったと思います。
看板キャスターに返り咲いてからまた食事を摂るのが困難になっていたらしい浅川が、岸本と牛丼を食べる様子は、自分を取り戻したようで安心できます。
チェリーと死刑囚の松本が一緒に食事をする場面も、胸が熱くなりました。
犯人が捕まる場面などが描かれなかったのは、ドラマとしては事件の犯人探しよりも真実を報道するメディアの使命に焦点を当てていたからかなと。
報道により影響を受ける人々にも触れていて、報道の在り方を考えさせられます。
夢を見ようという浅川の言葉と共に、その後の描写がありましたが、干されるかと思っていた浅川がまだキャスターを続けていたのは驚きました。
というか、「夢を見よう」という言葉から、もしやこの描写は夢なのか?などと考えてしまいましたが。
真実を報道するキャスターが干されずにきちんと続けられる、真実がきちんと報道される、そういう正常な社会。
そういう夢、理想を思い描こうということなのかと。
逆に言うと、今の現実はそうではないということだと思いますが。
権力を監視する役割のメディアの重要性も伝わりましたし、人物描写も多面的で繊細で、とても見応えのあるドラマでした。
続編とかあればと期待します。