カモフカブログ

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「変な絵」感想 それぞれに語り口の異なる謎解きストーリー

雨穴著「変な絵」を読みました。

雨穴のYoutube動画も好きで、前作「変な家」も面白かったため、今作も読んでみたものです。

 

本の冒頭から、続きが気になりグイグイ読ませる構成で、やはりとても面白かったです。

3つの章と最終章からなるストーリーですが、3つの章はそれぞれに独立した謎解きがあり、語り口の雰囲気も異なり、それぞれに読みごたえがあります。

エピソードが段々と繋がってゆくのも面白いですし、奇妙な不気味な不穏な空気感も印象的です。

 

※以下、ややネタバレを含む感想です。

 

第一章

奇妙なブログに載せられていた5枚の絵。

絵の謎を知ったというブログの管理人は、それ以降更新を止めてしまっていた。

 

その奇妙なブログを見つけた大学生が絵の謎を解き明かそうとします。

最後の投稿以外は一見普通の日記ブログですが、微妙な違和感が。

その違和感が不穏さを醸し出し、絵の謎が解けた時はなんとも言えない恐ろしさで、ビジュアル的にもインパクトがありました。

 

このブログは実際にネット上にあるようで、検索すると見ることができました。

ここまで作っているとは感心します。

 

 

第二章

子供が描いた奇妙な絵。

自分の家をぐちゃぐちゃと灰色で塗りつぶしているのは何故なのか。

 

このエピソードは絵の謎を解くミステリーものであると同時に、得体の知れない恐怖が迫ってくるサスペンスという感じでもあります。

小説、文字の記述ならではの予想を裏切る展開もあり、唸らされました。

 

ちなみにかなり個人的ですが、丁度これを読む3カ月ほど前に引っ越しをして、引っ越し先の部屋がこの話に出てくるのと同じ部屋番号で、妙な気持ちになりました。

最上階というのも同じでエレベーターとの位置関係も似ていて、なんだか不気味さが増し、勝手にシンクロニシティを感じながら読んでしまいました。

 

 

第三章

山中で発見された凄惨過ぎる惨殺死体。

美術教師だった被害者が描いた山並みの絵は、ダイイングメッセージなのか。

 

事件から数年後、被害者の教え子である青年が事件の真相を知るために絵の謎を解いてゆきます。

事件当時の新聞記事の記述が差しはさまれていたり、地道に事件資料を分析したり、ルポ風の語り口で、犯人を推理する王道のミステリーとしても面白いです。

真相にたどり着いたかと思ったら、これも予想外の結末で、しかも恐ろしい。

謎が解ける達成感を期待していたら、地獄に突き落とされたような。

 

絵の謎については、正直、手の可動域とか本当にその状況でそんな風にできるのかな、とも少し考えてしまいますが、トリックや心理などは成程と思いました。

 

 

最終章

全てのエピソードが繋がる最終章です。

冒頭の絵の意味は実はこう解釈されるのかと。

辛い少女時代を経てこういう結果になるのは、複雑な印象ですが。

また、歪んだ母性本能ではありますが、一線を超えるかどうかは状況次第で誰にでも可能性はあるのではないか、と言及する部分も理解できます。

 

それまでのエピソードでの、奇妙な絵を描くに至る心理についても、不安や抑圧の中に愛情も感じられ、なんともやるせないです。

 

ラストは、子供たちの明るい未来を感じさせるもの、と思いきや……

その場面は犯人の人生を連想させるもので、子供思いの父親と子供と距離をおく母親、家族でのバーベキューなど、犯人の暗い影の部分が重なり、不穏な雰囲気も感じざるをえません。

同じ状況でも子供の気持ちを尊重していれば大丈夫、とも、同じ状況はどこにでもあり一歩ずれたら犯人のような結果になりうる、ともとれるかと。

 

どちらにしろ、子供に良い影響を与えられる環境で、子供たちには明るい未来が待っている、という方で解釈したいなと思います。

 

それにしても、雨穴のYoutube動画でも出てくる栗原が登場しましたが、事件関係者に接触するために足を折ったということでしょうか。

と考えると、実はかなりヤバい人なのではと思ってしまいました。

Youtubeでも1章の絵について雨穴が謎解きする動画がアップされていますが、雨穴と栗原のやり取りが面白いです。

動画は雨穴のキャラクターのシュールさに加え、そういうコミカルさも魅力です。